( 123839 )  2024/02/01 22:55:04  
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 現在、日本経済が抱えている問題は3つある。「人口減少」「低成長」「貧困化」だ。 

 

 このうち、「低成長」の象徴は「1人当たり名目GDP」(ドル換算)の推移ではないか。24年前('00年)G7諸国のなかで、この数値の日本の順位は1位だったが、IMFの「世界経済見通し」のデータによると、'23年は最下位に転落した。 

 

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 '23年の「1人当たり名目GDP」(ドル換算)は、'00年との比較で、アメリカ、ドイツ、カナダは2・2倍、フランスは1・9倍、イタリアは1・8倍、イギリスは1・6倍だが、日本のみが0・9倍へと低下している。 

 

 何がこれらの国々と日本との明暗を分けたのか。 

 

 一つだけ確かなことは、バブル崩壊以降、経済成長率が低迷するなか、日本では、その原因の一つが財政政策や金融政策にあるとして、積極財政やより拡張的な金融政策への転換を求める声が高まっていったことだ。 

 

 これは、アメリカやドイツなどと明らかに異なる現象であった。これらの声の集大成が、'13年から行われたアベノミクスだったと考えられる。 

 

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 では、実際のところ日本の財政や金融政策のスタンスはどうであったのか。'23年においてG7諸国のうちアメリカやイタリアなどの債務残高(対GDP)は150%未満だが、日本のみが250%を超える債務を抱える状況になった。'00年の日本では140%程度であったので、急激な勢いで債務を累増させたことが見てとれる。 

 

 また、日本銀行も異次元の金融緩和により、大量の国債購入を行い、そのバランスシートを急拡大させた。'13年1月10日時点で158兆円に過ぎなかった日銀のバランスシートは、'22年末日時点で704兆円、'23年末日時点で750兆円にまで膨れあがった。 

 

 このような拡張的な財政政策や金融政策により、我々の生活は本当に豊かになったのか。 

 

 最近は、国際情勢の変化にともなう資源価格の高騰や円安の動きもあり、日本でもインフレが顕在化している。 

 

 デフレ脱却前は、物価はいずれ上昇するという「期待」を家計や企業が持てば、経済が活性化するという議論もあったが、総務省が今年1月9日に発表した「家計調査」('23年11月分)によると、2人以上の世帯の消費支出は、物価変動の影響を除いた実質で前年同月比2・9%の減少であった。勤労者世帯の実収入も実質で前年同月比4・7%の減少である。 

 

 従来から、経済学者の主流派は、財政政策や金融政策で一時的な経済ショックを緩和し、景気回復を促すことはできても、経済成長を実現できるとは考えてこなかった。 

 

 それは、20世紀を代表する経済学者ジョン・メイナード・ケインズも同様だ。 

 

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 積極財政を実現するのは人々の創造力や努力にほかならない。政府にできることは、規制改革などで、その条件整備を行うことだ。 

 

 日本は人口減少や高齢化のトップランナーだが、ほかの国々から学べることは沢山ある。謙虚な姿勢での学習や、絶え間ない果敢な挑戦と「もがき」こそが、経済成長を促す。「経済成長に魔法の杖はない」ことに気づき、日本人がアニマルスピリットを取り戻した時こそ、本当の日本の再生が始まるはずだ。 

 

 「週刊現代」2024年2月3・10日合併号より 

 

週刊現代(講談社) 

 

 

 
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